家系ラーメンと総合格闘技とフィリップ・コトラーと
ジムで汗を流し帰ろうとする私を、代表が呼び止める。近所の家系ラーメン屋が始めた50円のチャーシューご飯が美味いのだと。
しかし、ジムで運動した後に家系ラーメンを食べることは、プラスマイナスでプラスになってしまう。だから私は練習後の家系を封印したのだと告げる。
だが代表は言った。
『あの店のチャーシューご飯は炊き込みご飯のようになっていてあっさりしているのです』
『逆に考えるんです。家系ラーメンではなく、チャーシューご飯を食べに行くのだと』
『あの店には半ラーメンというものもあります。半ラーメンの半分は優しさでできている』
私は納得し、半ラーメンとチャーシューご飯を注文することにした。
店員さんにチャーシューご飯の大きさを問われたので、大きい方でと答えておいた。
数分後、全ラーメンにしか見えない半ラーメンと、がっつりチャーシューが盛り込まれた丼飯が届いた。
ウチの代表はこうして会員をデブらせて、退会できないように仕向けているのだろう。
コトラーは“マーケティングとは、利益を生み出す顧客を引き付けて離さないようにする技術”と断じた。これぞまさに家系マーケティングと呼ぶべき恐ろしき手腕だ。
ラーメンそのものは、美味しかったブヒ。