読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

風とビスコッティ

第3回ゴールデンエレファント賞受賞「クイックドロウ」作者です。ある日ブログのタイトルを思いついたので、始めることにしました。できれば世の役に立つ内容を書き記していきたいと思っています。

CGアニメとジブリと、ファイアープロレスリング

この間から、NHKの『山賊の娘ローニャ』というアニメを観てる。


NHKアニメワールド 山賊の娘ローニャ

 

国営放送の子供向けアニメで“山賊の娘”という物騒なタイトルと、宮崎吾朗宮崎駿の息子)が監督をするというのが気になって視聴した。

山賊と言えばやはり犯罪者なわけで、その娘がどのように成長していくのか。どっかでローニャが官憲に捕まって、仲間が

「あの娘を解き放て!あの娘は山賊だぞ!」

みたいに叫ぶシーンがあるのか、無いのか気になって観ている。

 

だが実際にはスウェーデンの作家アストリッド・リンドグレーンによって書かれた児童文学が原作だという。劇中には“鳥女”という名称のモンスター(ハーピィみたいなやつ)が出てきたりして、基本的にはファンタジーなんだと思う。

 

●ぬるぬる動けど、何か作り物臭いCGアニメーション

で、物語はまだ始まったばかりなのでさておいて、やたらと気になったのがアニメーションだ。ぱっと見はセルアニメ風なのだが、人物の動き(特に表情)がぎこちない。たぶん3Dモデリングセルアニメ風なテクスチャを貼って動かしてるんだろう。

アニメの作画については詳しくないが、最近の流行なのだろうか。前に中国の戦国時代を舞台にした『キングダム』というアニメを見た時にも、同じようなアニメーションを見た。

 

技術的には先進的な取り組みなんだと思う。アニメーターの方々が一枚、一枚魂を削りながらセルに手描きして作っていたアニメが、CGでぬるぬる動くのだからきっと作業効率もいいはずだ。

だけど、どこか違和感を感じる。絵はかなり滑らかに動いているのだけど、どこか“イキイキと”していない。特に顔の表情なんかはハッキリと作り物くさい。ディズニーランドの“カリブの海賊”の人形たちがぬるぬると動いて芝居をするけど、まさにあんな感じ。

 

なぜだろう。原理的には、パラパラ漫画の要領で描かれている従来のセルアニメよりも、はるかに描写されている情報量は多いはずだ。しかし実際にはキャラクターの動作を端折って描かれている従来のセルアニメの方がイキイキと感じられることが多い。テクノロジー的には劣る宮崎駿の昔のアニメの方が、はるかに躍動感を感じる。

 

●脳内で補完するセルアニメ

結論から言うと、従来のセルアニメは写実的なリアリティではCGに劣るが、表現に緩急をつけ、デフォルメさせることで観客に“脳内補完”させてるんだと思う。

天空の城ラピュタ”でパズーは目玉焼き乗せトーストをたったのふた口で平らげるが、実際にやったら火傷する。だがあれを大口を開けて二口で食べ尽くすことで、観客はパズーの空腹を、トーストに乗せた目玉焼きの香ばしさを想像するのだろう。

対するCGアニメは情報として動きや光線、影の動きなどをリアルに表現しようとするが、本当の表現には及ばない。その結果、リアルなんだけど中途半端な作り物臭が鼻につくのではないだろうか。 

f:id:ejibexejibex:20141023225420j:plain

 

●プロレス者の“妄想力”が紡ぐ無限のファンタジー

そんなことをつらつらと考えてて、突然、往年のテレビゲーム『ファイアープロレスリング』シリーズを思い出した。

実在のプロレスラーをモデルにしたキャラクターがたくさん出てくるシリーズで、権利関係の問題か、本人を意識したリングネームだが実名ではない(長州力がハリケーン力丸、馳浩が伊達弘、みたいな感じ)。

そしてこのゲームの目玉が、自分の好きなオリジナルレスラーを作れるエディットモードだ。顔や体のパーツと使う技の組み合わせで、ゲームの中に出てこないお気に入りのレスラーを再現するのだ。

だが(昔のゲームなので)グラフィックはドットで描かれたチープなものだし、カクカクとした動きで繰り出される技のバリエーションにも限界はある。シリーズを追うごとに技の種類も増えるのだが、現実のプロレスでも新技が粗製乱造されていて、追いつかない。何せ筋金入りのプロレスマニアにかかれば、ジャーマンスープレックスの“クラッチの指の角度が違う”から別バージョンの技、みたいな謎理論がまかり通る世界だ。バリエーションなんか無限にあるわけだ。

 

そんな中、プロレスマニアたちはお気に入りのレスラーの必殺技に似通った技を組み合わせ、エディットを繰り返す。画面に映るレスラーの姿かたちも技の動きも明らかにホンモノとは違うのだが、作った本人の脳内では妄想力によってイメージが補完され、ファンタジーが完成している。

学生時代、周りにプロレスマニアが多かった僕は、そんな妄想力の塊みたいなゲームで、妄想のトーナメントを戦ったものだ。

自販機で買った物を拾い上げる時など、今でも腰を落とす瞬間に技ボタンを押してしまうのは、そんな学生時代の名残なのかも知れない。