危険ドラックの街とシビレる坦々麺とリーガル・ハイ
危険なドラッグ、略して「危険ドラッグ」!
しばらく「脱法ハーブ」という名称で認識されていた薬物が、その危険性を考慮して新たなネーミングを公募したのが2014年の夏ごろ。
吸引者が自動車事故を起こしたり、全身が弛緩して排泄物を垂れ流すなど、事件が多発したため、その危険性を伝える名前にする、という話だったが、最終的に「危険ドラッグ」という安直な名前に決定して日本全国がずっこけたことは記憶に新しい。
これならいっそ、私の知人が考えていた「母さん助けてドラッグ」もしくは「脱糞ハーブ」などを採用して欲しかった。
ちなみに英語圏では危険ドラッグのことを「リーガル・ハイ」と呼ぶらしい。合法的にハイになれる、という意味だ。それを聞いて合点がいった。堺雅人のキレキレの演技は素面では無かったのだ(シーズン3、楽しみにしています)。
池袋で合法的にハイになれる場所
以前、危険ドラッグの吸引者が悲惨な事故を起こした街、池袋。ここは今や横浜、神戸に負けず劣らずの新・中華街の様相を呈してきている。
街を構成するのは、新華僑と呼ばれる、戦後に日本へ留学した中国人たちだ。彼らが定住し、様々な店舗を開いたことから、現在は3万人もの中国人が生活しているという。特徴としては、東北出身者が多く、お店で出す料理も観光地化した横浜や神戸と違い、本場の味に近いと言う。
そんな池袋に店を構えるのが「中国家庭料理 楊」だ。
中国家庭料理 楊 2号店 (チュウゴクカテイリョウリヤン) - 池袋/四川料理 [食べログ]
ここはTVドラマ「孤独のグルメ」で有名になってしまい、行列ができて常連としては腹立たしい限りなのだが、もちろん私もドラマで店を知って行列を長くしたクチだ。番組で五郎さんが食べていた汁無し坦々面が美味そう過ぎて、番組放映後の混雑する中、食べに行った。
それからしばらく経ったが、久しぶりに再訪してみた。
ビリビリに痺れる花椒の辛さ
坦々面や麻婆豆腐など、四川料理が人気であるこのお店では、料理を注文すると店員さんが「辛いけど、大丈夫?」と聞いてくる。このくだりは「孤独のグルメ」のドラマの中でも再現されていて、このお店のお約束なんだと思う。
ここで特別辛いのが好きじゃない人は、「辛さ控えめで」とお願いしないといけない。よく初めての店では「普通で」と答えて基準を計ろうとするが、この店でそれをやるのは危険だ。
マジでどっ辛いからだ。
唐辛子の辛さもそうだが、花椒(ホアジャア)と呼ばれる中国山椒の痺れる辛さもまた凄い。いわゆる麻辣味と言われる、辛さと痺れのダブルパンチが襲ってきて、意味も無く往年のアーケードゲーム「双截竜(ダブルドラゴン)」を思い出してしまう。
刺激が半端無いため、食べ続けるうちに毛穴から汗が噴出し、唇の周りは局所麻酔を打たれたかのようにビリビリと麻痺してくる。こめかみの辺りは血液がドクドクと脈打つ音が響き、動悸が激しくなる。
とある本によれば、「ドラッグ」と呼ばれる物の定義は非常に難しく、広義で考えれば砂糖ですらドラッグの範疇に入ると言う(体内に摂取すると血糖値を上げるという作用を及ぼすからだ)。
その定義で言えば、 麻辣味とは確実にドラッグだ。
私の周囲でも、辛さにはまって蒙古タンメン中本に通いつめる人が後を絶たない。精神依存の症状さえ発症しているのだ。
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そもそも何で中国の人は、口に入れると痛いレベルの刺激物を食べようと思ったのだろうか。 宮廷の遊びに飽きた貴族の師弟たちが、非日常の刺激を与えてくれる嗜好品としてもて遊んだのだろうか。
だとすると、衣食住足りた先進国で、わざわざ体に害を及ぼす粗悪なドラッグを取得する現代の若者のようではないか。
辛さで口の周りが麻痺した私は、よだれを垂らしアワアワと呻きながら帰路についた。こんな危険なものが野放しにされている池袋という街のデンジャラスさに慄きながら。
翌日、トイレに入った私は摂取したカプサイシンを体外に排出する、いわゆる〝抜く〟過程で地獄の苦しみを味わった。そういう意味でもこの坦々麺は危険だ。
次回は池袋東口にて、強烈な精神依存を起こすというラーメン二郎に挑戦してみたいと思う。
以上、特にオチはない。