風とビスコッティ

第3回ゴールデンエレファント賞受賞「クイックドロウ」作者です。ある日ブログのタイトルを思いついたので、始めることにしました。できれば世の役に立つ内容を書き記していきたいと思っています。

シャーロック・ホームズと世界一有名な下宿跡にある博物館~イギリス旅行~

名探偵、と聞いて思い浮かべるのはいったい誰であろうか?

 

日本ではいつの間にか、名探偵といえば“江戸川コナン”になってしまった。

 

名探偵コナン 85 (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン 85 (少年サンデーコミックス)

 

 

90年代に“金田一少年の事件簿”が切り開いた推理漫画ブームに乗って、颯爽と登場した名探偵コナン。漫画×ミステリという、すぐにネタ切れを起こしそうなジャンルにも関わらず、20年以上に渡って連載を続け、今やコミックスの発行部数は1億5000万部を超えているという。

セールスと言う意味では先達である金田一少年を大きく引き離し、名実ともに日本一の名探偵の座に君臨していると言っていい。

 

だがそもそも金田一少年も、江戸川コナン本歌取り的に生まれた作品であり、彼らが生まれる土壌として数多の名探偵が存在した。

日本代表で言えば、金田一少年の祖父である金田一耕介、コナンの苗字のモチーフである江戸川乱歩が生み出した明智小五郎など。

 

だがやはり、世界的な知名度、人気という意味で圧倒的な探偵といえばあの人だ。

そう、シャーロック・ホームズである。

 

 

すべての名探偵のオリジン。

シャーロック・ホームズこそがあらゆる名探偵作品の礎だ。

(※厳密にはエドガー・アラン・ポーの描いたオーギュスト・デュパンが元祖かも知れないが、読者はあまり気にしない。例えば“餃子の王将”と“大阪王将”のどちらが元祖か、知っている人が何人いるだろうか?)

 そして登場以来120年、シャーロック・ホームズを題材にした作品は枚挙に暇がない。

最近ではHNKで三谷幸喜脚本の人形劇が放映されているし、現代を舞台にしたイギリスのドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」は大変な人気で、主演のベネディクト・カンバーバッチの名前を一気に世に知らしめた。

そろそろ、古今東西の名探偵を美少女化した艦隊これくしょん的な『探これ』がDMMから発表され、そのメインキャラクターにホームズが起用されるのではないだろうか。

登場から100年を超えてなお、ホームズを超える名探偵は現れそうにもない。なぜなら、繰り返しになるがホームズこそが名探偵のオリジンだからだ。歴史は変えることができない。始点にその名が刻まれている以上、それ以降に現れるものは全てフォロワーになる。

U2やColdplayがどれだけヒットを飛ばそうと、ビートルズを否定することはできない。どうしてもそれをしたければ、マーティ・マクフライがやった方法を踏襲するしかないだろう。

 

 

 そしてベーカー街221Bへ

 ロンドンで最も有名な通りは間違いなくベーカー街だ。マダム・タッソーの蝋人形館があるからではない。シャーロック・ホームズがワトソンとともに下宿していたのがベーカー街221だったからだ。

 実際にはホームズが下宿していたとされる1880~1903年頃には、ベーカー街には221Bという番地は存在しなかった。そのためホームズの下宿の位置について正確に特定されているわけではない。

 そんなベーカー街に立つのが「シャーロック・ホームズ博物館」である。1936年まで実際に下宿として使われていた建物であり、「空き家の冒険」の中の描写と同じく17段の階段があるため、ホームズの下宿に違いないと主張している。 

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建物は4階建てで、1階が土産物屋。2階から上がホームズとワトソンの居室を再現したミュージアムになっている。

 

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ホームズがパイプをくゆらし、ワトソンと談笑を交わした暖炉。

※ミュージアム内の係員(メイド姿!)にお願いすれば、帽子とパイプを手に記念撮影もしてもらえる。 

 

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あちこちに飾られている備品は単なる飾りではなく、様々な作品小道具の再現だったりするので、マニアにとってはたまらないだろう。

 

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 館内はとても狭い。細い階段を通って3階へ向かう。

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3階からは、突然蝋人形の展示がされているので度肝を抜かれる。基本的に作品中の一幕を再現しているのだろうが、なにぶん狭い部屋の中なので舞台装置が十分でなく、甥っ子の学芸会を無理やり見せられているような気分になる。

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牢屋を再現したかったのだろうが、、、単に室内で悪ふざけをしているようにしか見えない。。

 

 

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何の予告もなく、部屋の片隅に倒れこむ人影があったものだから、悲鳴を上げそうになった。

 

しかし、驚くのはまだ早い。実はこの死体の上の天井には・・・・

 

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穴が空いており、誰かがランプを差し出しているではないか。

その穴の中を覗いてみると。。。

 

 

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こちらの様子を伺っているのは、、、、誰?

(ホームズとワトソン??)

 

おそらく元ネタは「マスグレーヴ家の儀式」だろう。とある貴族の古い屋敷から失踪した執事が、実は地下室に隠された財宝を盗み出そうとしていた、という話だ。物語のラストで、執事は問題の地下室で死体となって発見される。かつて自分が捨てたメイドの逆恨みによって閉じ込められてしまったというオチだ。

※このエピソードを知らなければ、天井からランプを吊るすホームズたちの姿にはなかなか気づかない。

 

 

これだけの充実した見世物を楽しんで、入場料はたったの十ポンドだ。スコットランドネッシーランドが六ポンドだったことを考えると、破格ではないだろうか?

 

ネッシーの実在問題とネッシーランド ~イギリス・スコットランド旅行~ - 風とビスコッティ

 

ここでひとつ気をつけて欲しいのは、シャーロック・ホームズ博物館は大行列だということだ。私は平日に行ったが、それでも30分は並んだ。

 

そしてもう一つ大事なのは、いきなり行列に並んではいけない、まず一階の土産物屋の奥へ行き、入場券を買う必要があるということだ。

そうしないと30分並んで入り口まで到達しようかというタイミングで、ニヤケ面の係員から「入場券は買った?まだの人は土産物屋の奥で買ってね」と通告され、また行列に並びなおす羽目になる。

 

賢明なる読者諸氏においては、抜け目無く入場券を買った上で並んだ上で、自分の後ろに並んだ人がそれを見落としていたら教えてあげて欲しい(私がそうしたように)。

後ろに並んだ日本人カップルに得意満面で入場券について教えた後、こう付け加えるのだ。

「基本だよ、ワトソン君」